『テキサス・チェーンソー』

原題『The Texas Chainsaw Massacre』。
言わずと知れた傑作ホラー『悪魔のいえにえ』のリメイク版。
自称ホラー好きながら、最初の10分くらいで見るのをやめて、そのままDVDをブックオフにでも売り飛ばそうかと思いましたよ。
デビッド・フィンチャーの『セブン』で感じたのと同じ不快感。
見た人に嫌な思いを感じさせる為に丁重に話と絵を仕込んでいるかのような作り手の情熱が、逆に“悪意”に思える、そんな感覚。
悪く言えば一時期流行ったトロマ・ムービーのような悪趣味感。
テキサスの焼けるような日射しの下で起こる猟奇的事件が、生理的不快感をあおる描写でぐいぐいと進行し、見ているだけで朦朧としてきます。
ホラー好きなんてのは本当は恐がりなんですってば。
怖さに対する免疫作りとか、予行演習のつもりでホラーを見たがるなんて分析されてるくらいだから。
こういうハードなホラー映画は辛いわけ。
(『スクリーム』等の軽めのホラーに慣れてしまったのか?)
嫌な湿り気と腐臭を漂わせながら殺伐としたストーリーが進む中、おなじみ“レザーフェイス”が登場するわけですが、死人の皮をかぶってチェーンソーを振り回すという、もはや古典ともなったその出で立ちにむしろホッとしたりもして。
とにかく、一言でいうとガチガチで“遊びのないホラー”。
痛い感じと汚い感じが嫌みな程のリアリティを持って迫ります。
いや、冷静に考えると全然リアルじゃないんだけど、自分も当事者になったかのような錯覚をさせるほどカメラワークが上手い。
構図の美しさや巧みさも、カット割りのテンポの良さも、ここ数年に見た映画の中でもダントツの出来映え(もちろん映画のジャンルを問わず)。しかも知的。
な〜んて気付いたあたりから段々と見ているのが楽しくなってクライマックスへと向けてテンションも上がります。
いや〜、この映画おもしれ〜!
オリジナル版に負けず劣らずのパワーとスピード(個人的にはむしろ勝っているかと)。
最後にはしっかりとカタルシスもあり、見終わってみれば、さすが製作=マイケル・ベイと唸ること必死の超娯楽作でした。(あくまでも娯楽作ですが、基本的にホラーがダメだと不快感の方が強いと思うのでお薦めしません。)
ところで、ホラーファンであれば皆、『死霊のはらわた』のアッシュ(『2』で、切断した右手首にチェーンソーを装着して死霊と戦う)と『悪魔のはらわた』のレザーフェイスを、『エイリアン vs プレデター』なみに競演させて、両雄のチェーンソー一騎打ちを見たいと思うところですが、本当にやってしまいそうで怖いのが今のハリウッドだったりもして。
邦題はもちろん『死霊のはらわた vs 悪魔のはらわた』の“はらわた対決”。
ついでに、『エイリアン vs プレデター』といえば、この「エイリアン vs. プレデター」公開記念DVDパックって「一番安くエイリアンとプレデターの全作品を揃えるためには、どのDVDパックと、どのDVDパックを買えばよいか答えなさい」というIQテストですか? 組み合わせがあまりにもトリッキー。
面倒くさくなって5セットとも買ってしまいそうなので誰か僕を止めてください。

テキサス・チェーンソー コレクターズ・エディション
ポニーキャニオン
2004-10-06

by G-Tools

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