2005年 3月 6日 の記事

吾妻ひでお『失踪日記』

  • 2005年 3月 6日
  • カテゴリー : Book

吾妻ひでおの自伝マンガにして最新作。 世間的にはロリマンガの第一人者みたいな認識もありますが、日本でも数少ない“SFらしいSFマンガ”を描ける方。 (“SFのようなファンタジー”を描けるマンガ家さんは沢山いますが・・・) とはいえ、僕の頭の中にあるSFというのは筒井康隆、小松左京、星新一の御三家のみなんですけどね。 そんなわけで、昔からファンなのですが、久々に新作が出たので購入。今回は自伝。相変わらずのこの人の日記系マンガは面白い。 一時マンガ家を辞めて肉体労働をしていたというのは知っていたのですが、なんと【失踪】→【自殺未遂】→【ホームレス】→【警察が保護】→【マンガ家復帰】→【また失踪】→【再びホームレス】→【ガス配管工】→【警察が保護】→【マンガ家復帰】→【アル中でリハビリ施設に強制入院】→【マンガ家復帰】という壮絶な人生を歩んでいたとは! ・・・と、このマンガは、その間の体験を事実だけに基づいて綴った日記マンガなのです。と、書くと、つげ義春的ですが、あくまでも客観的に、かつギャグマンガとして描かれています。 警官に保護された時、警察に吾妻ファンがいて色紙にマンガを描かされたとか、配管工時代に、ついついマンガ家としてのプライドが騒いで社内報にマンガを投稿して採用されてしまったりとか(だが、誰も吾妻ひでおだと気が付かない)、オタク体質なのに肉体労働で筋肉が鍛え上げられてムキムキの身体になって戻ってきたりとか、体験自体が充分面白いのですが、その体験をマンガというエンターテインメントに昇華させて、さらに面白い作品に仕上げているのが凄い。 今まで、吾妻作品を読んだことが無くても充分面白いはず。 これだけボロボロの生活をした後に描いているのに、今までで最も絵の質が高いっつー事にも驚かされます。(一時期、結構絵が荒れてましたから(笑)) 少なからずギャグマンガ家は“あっちの世界”に行ってしまいがちですが、吾妻ひでおは(本人の意思とは関係なく)生還したばかりか、以前より脂がのってきてる感じ。 以前とうって変わってマイペースで仕事をされているようですが(一日2ページとか(笑))この人の“丸っこい”絵を眺めているだけで良い気分になれるので、末永くダラダラうつうつとテキトーに頑張って頂きたいものです。 25年の時を経て、遂に超名作『不条理日記(SF大会・星雲賞受賞作)』を超えた・・・と書いておきます。 失踪日記 吾妻 ひでお by G-Tools- [ 続きを読む ]